心と体がほどける、春の湯治リトリート体験記  in 大分県竹田市

一般社団法人日本オントロジカル・コーチング協会は、2025年3月27日から30日の4日間、豊かな自然に抱かれた大分県竹田市にて「わたしを奏でる湯治リトリート」を開催いたしました。

日々の喧騒から離れ、自分自身と深く向き合うための特別な時間「リトリート」。今回は、古くから日本に伝わる癒しの知恵「湯治」と組み合わせた唯一無二のプログラムをご用意しました。

この記事では、自分自身と向き合った参加者の体験ストーリーをお届けします。どうぞ、癒しの旅の追体験をお楽しみください。

書き手:もっち
「わたしを奏でる湯治リトリート in 春の大分県竹田市」の参加者。夫婦で広報・ライター業を営む。


前回のレポート記事はこちら

雨音に包まれて、自分と深く向き合う時間

温泉をこよなく愛する私にとって、「リトリート」と「温泉」という組み合わせは、まさに夢のよう。何より、前回のリトリートで得た心地よさが忘れられず、今回の参加も迷うことはありませんでした。

リトリート初日は、しとしとと降り続く雨。しかし、不思議なことに、この雨こそが、今回のリトリートの時間を特別なものにしてくれました。

日々の喧騒から遮断され、静かに、そして深く、今の自分の心と向き合うための時間。雨音だけが優しく響く空間で、理奈さんの温かいガイドに導かれ、そっと心に問いかけます。

「今の私は、どんな心の状態でいるだろう?」

「4日間のリトリートを終えたとき、どんな自分に出会いたいだろう?」

日常とは異なる空間で、降り続く雨の音に耳を澄ませ、静かに自分の心を見つめてみる。 

自己表現が苦手で、人に頼ることにためらいがあり、いつも他人の輝きをどこか羨んでしまう自分。周りと比べて自信を失い、そんな自分をますます嫌悪してしまう。

普段は心の奥底にそっとしまい込んでいる、そんな負の感情たちが、まるでゆっくりと浮かび上がってくるようでした。

一枚一枚、カードを手に取りながら、言葉にならないありのままの心を映し出す絵を探していきます。

参加者それぞれが、選んだカードの理由をぽつり、ぽつりと語り始めます。その言葉に耳を傾けていると、どの理由にも正解も不正解もないのだ、という穏やかな気づきが訪れます。自然と、お互いを尊重し、受け入れる温かい空気が、その場を満たしていくのを感じました。

温泉に溶けていった心の「もや」

長湯温泉の湯にゆっくりと身を沈めていると、日々の疲れとともに、そんな澱んだ感情までもが、じんわりと溶け出していくような感覚に包まれます。

「認められたい」「大切にされたい」――

普段は忙しい日々に追われ、意識の奥底にそっとしまい込んでいる、そんな自分の内なる声に、静かに耳を澄ませます。日常の中ではなかなか気づくことのできなかった、本当の気持ち。心の奥底でそっと願っていること。自分のことなのに、自分が一番分かっていないことの方が多いのかもしれない、そんな静かな気づきが、ふと訪れます。

このリトリート期間中、気がつけば、温泉に身を委ねていました。それは単に体を癒やすだけではなく、心の奥に積もっていた感情の澱をゆっくりと洗い流す、静かで贅沢な時間だったように思います。

「子ども相手にかけてあげられるような、温かく優しい言葉を、今の私は、自分自身にもかけてあげられているだろうか?」 

「いつも頑張っている自分を、ちゃんと労い、心からのねぎらいの言葉をかけてあげられているだろうか?」

そうして心の奥深くをグーっと観察してみると、そのうちにどこかほんのり、優しい感情が芽生えたような気がしました。

空っぽにするからこそ、深く吸い込めるということ

翌朝、雨が上がった春の里山を、ハイキングに出かけました。心拍数を意識しながら、そこに息づく自然を、目で、匂いで、音で、感じます。

神聖な空気に包まれた神社林の中で、静かに目を閉じます。シブさんの穏やかなガイドのもと、足の裏で大地の温かさを感じ、頭上にはどこまでも広がる青い空を感じる。するとその瞬間、自分がこの広大な宇宙の調和の中で、ほんの小さな一部として確かに生かされているのだという、謙虚で温かい気持ちが、ふつふつと湧き上がってきました。

歩き終え、心地よい疲労を感じる体を癒やしてくれるのは、やっぱり温泉。何百年、何千年という途方もない時間をかけて育まれた自然の恵みにそっと身を委ねると、体中の細胞が喜んでいるかのように、じんわりと温まり、心まで満たされていくのを感じます。

翌日には、静寂に包まれた早朝の禅寺にも訪れました。住職の厳しくも穏やかな声が、ただ呼吸を感じることに意識を向けるよう、私たちを導きます。調身/正しい姿勢で坐ること、調息/呼吸が整えば、自然と調心/心を調えることもできるという教えを聞き、荘厳な雰囲気の中、静かに座禅を組みます。

普段は意識することのない、自分の呼吸の、吸う、吐く、その一瞬一瞬に、ただ意識を集中させていきます。

そのあと頂いたお粥の、美味しかったこと。

物に溢れ、瞬時に情報にアクセスできる現代。私たちは、知らず知らずのうちに、不要な荷物を背負いすぎているのかもしれない。本当はもっと、シンプルで、ありのままでいいのかもしれない。そんな風に、竹田の豊かで清らかな空気が、澄んだ心へと導いてくれるように感じました。

和尚さんの説法を静かに聞きながら、どんな人にもそれぞれの悩みがあり、それでも懸命に考え続けることこそが、人生という道のりなのだと改めて感じ、悩みさえも人間として成長するための貴重な機会なのだと、ありがたさを感じるようにもなりました。

晴れた春の空と桜を眺めて、深呼吸。背負っていた荷物を手放すと、「もっと自由に、どんどん、冒険したい」「知らないこと、知らない場所、知らない人に出合いたい」そんな前向きなエネルギーが湧いてくるのを感じました。

このリトリートで得たもの

・ 温泉の温もりが、日々の疲れだけでなく、心の奥底に溜まっていたわだかまりまでも優しく洗い流してくれた

・ 豊かな自然の中で、じっくりと自分自身と向き合う時間を持てたことで、本当に大切にしたいもの、心の奥底で求めていたものに、改めて気づくことができた

・参加していた方同士の心の機微に少しだけでも触れて、自分と違う人生を生きる人との、出会いの喜びを感じることができた

日常に戻った今、以前とは少し、物事の捉え方が変わったように感じています。目の前の小さなことに一喜一憂するのではなく、より大きな流れの中で物事を捉えることができるようになった気がします。自分も含めて、それぞれの人がそれぞれの役割を担い、支え合って生きているという感覚を持てたことで、他人との関わり合いも少し変わってきました。

もし今、忙しい日々に追われ、心身ともにエネルギー不足を感じている方がいれば、ぜひ一度、コーチング・リトリートを体験していただきたいと思います。きっと新しい自分と出会い、明日からの日々をより穏やかに、そして豊かに生きるためのヒントを得られるはずです。

主催:一般社団法人日本オントロジカル・コーチング協会
本プログラムは、環境省『チーム 新・湯治』加盟企業として、当団体が企画立案実施しています。

この記事を書いた人

Kenyairie